『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「常夏」はその26帖目のお話です。
「常夏」登場人物
源氏、玉鬘、頭中将(柏木)、弁少将、夕霧、内大臣、近江の君、弘徽殿女御
「常夏」あらすじ
噂の近江の君
夢占い以降、我こそは内大臣の落とし胤と、次々名乗り出があるようです。
中でも長男柏木(頭中将)が見つけてきた、近江の君は都で噂となっています。
育ちが悪かったせいか、姫君というにはほど遠い粗野な性格なので、内大臣は世間体が悪く、扱いに困っているのでした。
釣り殿の夕涼みで源氏は、内大臣の次男弁の少将にそれとなく事情を聞き出し、玉鬘を引き合わせたならどんなに感謝されることかと、内心ほくそ笑みます。
一方、すべてを兼ね備えた玉鬘の立后も考えかねないと、その処遇は至って慎重です。
玉鬘の処遇に悩む
釣り殿の夕涼みから夕霧の中将や弁少将、藤侍従といった内大臣の子息たちが、西の対にやって来て、庭先で撫子の花が美しく咲いているのを眺めています。
源氏は我が子ながら、夕霧の中将の内大臣の子息以上と思われる姿に雲居雁(内大臣の娘)との仲を引き裂いた内大臣について、玉鬘に嘆きます。
玉鬘は実父内大臣と源氏の微妙な関係性を知り、果たして引き合わされるのはいつのことになるのか、と心配になります。
そんな心配をよそに、最近では近江の君の事情を思うにつけ、ますます源氏の玉鬘の養育に熱が入ります。
特に和琴は、筑紫で少し心得があったものの田舎びていてはと、手をふれるのを玉鬘はためらっていました。
それでも調律はきっちりしていたので、筋をみた源氏は寄り添いながら教えます。
早く名乗り出て、名手と名高い実父内大臣の和琴を聞いてみたいと思う玉鬘です。
そんな心中を察してか、
なでしこのとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人やたづねむ
(愛しい人の面影を宿す撫子=あなたを見たら、元の垣根=夕顔のことを尋ねるはずです)
内大臣の元恋人でもあった夕顔(玉鬘の亡き母)との仲を探られるので、なかなか打ち明けにくいのですよと、言い訳めいた詠みぶりです。
以上から「常夏」と呼ばれます。常夏は撫子の異名でもあります。
それにしても源氏には、撫子の花のように可憐な玉鬘を手離したくない想いが募ります。
かといって妻に迎えて、紫の上を中心とする六条院の秩序も乱したくはなく、また、内大臣の婿になるのも気が進みません。
いっそのこと、兵部卿宮か右大将を婿にして六条院に通わせながら、陰で不倫の関係で居ようかなどと、不埒なことにまで考えを巡らす始末です。
近江の君を弘徽殿女御に仕えさせる
世間で笑いものになっている近江の君を、最初から道化者扱いにするために引き取ったと演出するために、いっそ弘徽殿女御(内大臣の娘)の行儀見習いにして、晒し者にしてしまおうと内大臣は考えました。
かたや近江の君は、無邪気に下の世話でもなんでもしますの勢いです。
これには弘徽殿女御方は、苦笑いするしかありませんでした。