『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「野分」はその28帖目のお話です。
「野分」の登場人物
源氏、夕霧、紫の上、玉鬘、花散里、明石の姫君、内大臣
「野分」のあらすじ
紫の上を垣間見る
秋の草花が見頃だというのに、野分(台風)があちこち吹き散らしています。
里下がり中の秋好中宮も、前栽の露が吹き払われる様子に心を痛めていました。
夕霧の中将が、東南の春の町に様子を見に行くと、風で押し開けられた妻戸の隙間から、偶然、紫の上を見て、その美しさに魂を奪われてしまいます。
見たこともないその美貌は、まるで樺桜が咲き乱れるようです。
だから父源氏は、自分を紫の上から遠ざけていたのだと、今あらためて納得されるのでした。
放心状態の夕霧に、鋭い源氏は勘づいて警戒を強めます。
六条院の女性を見比べる
源氏は夕霧に、中宮の野分のお見舞いをさせた後、自らも様子を伺いに出かけます。
中宮をはじめ明石の御方、花散里、玉鬘への巡回に夕霧も従っています。
東北の西の対では、父源氏が簾中で玉鬘と寄り添う姿を見てしまい、実の親子だというのに解せない気持ちになるものの、玉鬘の美しさに見とれてしまいます。
紫の上に比肩するほどの美貌は、山吹の花に例えられます。
東北の東の対の花散里は夕霧の親代わりですが、失礼ながら、なぜこの美貌ぞろいの妻妾の列に入れるのか、全く不思議でならない夕霧でした。
気立てはよいが不器量な花散里をも受け入れる、父源氏の懐の深さを痛感するのでした。
最後に、これまであまりそういう視点で見なかった明石の姫君は、行く末楽しみなまるで藤の花のような美貌です。
内大臣娘の扱いについて嘆く
一方、内大臣は三条宮に母大宮をめずらしく見舞い、娘の扱いに苦慮しているとこぼします。
内大臣の娘たちといえば、まず第一に弘徽殿女御の立后は絶たれ、その代わりに雲居の雁を東宮に差し上げようにも、夕霧との仲があるので断念せざるを得ませんでした。
おまけに、引き取った落とし胤の近江の君はといえば、世間の物笑いになっているのでした。
母大宮の雲居の雁への監督不行き届きを責めながら、持て余す近江の君をなんとか引き取ってもらえないかと、母に探りをいれる内大臣でした。