『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「帚木」はその2帖目のお話です。
「帚木」の登場人物
源氏、頭中将、左馬頭、藤式部丞、紀伊守、空蝉、小君
「帚木」のあらすじ
雨夜の品定め
五月雨の頃、宮中の宿直所に源氏の君が控えていたところ、頭中将をはじめ左馬頭、藤式部丞が集まり、女性談義に花が咲きます。
上中下とさまざまな階級の中にも、元は上流階級でも落ちぶれたり、または受領(地方官)などの中流階級でも裕福な家庭であったりと、様々区別がつきにくいものです。
意外と中の品と呼ばれる中流階級に、嗜みも教養も備わった女人が隠れているとし、左馬頭は、容貌はともかく染色も裁縫も良く出来る、気のきいた女性の話を始めます。
嫉妬深いのが欠点で、しばらく疎遠にしていると、終いには指に噛みついてきたので、そのままいよいよ放っておくと、嘆きのあまり絶命してしまったのです。
一方で、他に通っていた風流めかした女性は、陰で別の男性を通わせており、今思えば、容貌は今一でも気が利いて、信頼出来る指喰いの女性が良かったと語ります。
頭中将は、親がなくどことなく頼りない様子の女性の話を始めます。
可愛い子供も授かって大切にしようとおもっていたところ、正妻からの嫌がらせを受けて、いつの間にか姿を消してしまったのです。
一切恨みがましい様子も見せなかったので、全く気づいてやれず、その子共々行方知れずにしてしまったと語ります。
藤式部丞は、まだ文章生の頃、師匠の博士の娘と恋仲になり、詩作を手伝って貰ったりと、学問では頼りがいもありますが、文などは漢字ばかりで女らしさを感じなかったのでした。
源氏は、藤壺の宮のように何もかも兼ね備えた女性は居ないものよと、黙って微笑みながら聞いています。
そして、まだ知らない中の品の女姓に、興味を覚えるのでした。
紀伊守邸への方違え
翌日、源氏は方違えのため、中川(京極川)の紀伊守の別邸に向かいます。
急な来訪に驚いた紀伊守邸には、忌み避けのため、父伊予介の後妻空蝉も訪れていました。
空蝉は故衛門督の娘で、一時宮仕えも考えていたと耳にしたことが有ります。
源氏は、空蝉と弟小君との会話からその人と、見当をつけて忍んで一夜を共にします。
意外な出来事に空蝉は、娘時代ならこの逢瀬がどんなに光栄だったかと思いつつも、今となっては二度と逢瀬は望むべくもなく、頑なに拒む姿勢をとります。
源氏は、弟の小君に目にかけて童殿上させ、空蝉に取り持ちを頼みますが、二度目の方違えで紀伊守邸に訪れた時には、今度は上手に逃げられてしまいました。
帚木の心をしらでその原の道にあやなくまどひぬるかな
(帚木のように近づくと消えてしまうあなたの気持ちも知らないで、訳も分からずその原の道に迷い込んでしまいました)
とだけ詠みかけ、以上から「帚木」と名付けられます。
中の品の女にあたる空蝉ですが、気位を持して決して流されず、強情に拒み通す姿勢に、源氏は何故か心惹かれるのでした。