『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「若紫」はその5帖目のお話です。
「若紫」の登場人物
源氏、聖、僧都、尼君、若紫、少納言、兵部卿宮
「若紫」のあらすじ
若紫との出逢い
このところ、瘧(今のマラリア)が癒えない源氏の君は、霊験あらたかな北山の聖を尋ねます。
祈祷後、都にはない風情に感心する源氏に、従者の良清が、播磨国の海辺の情景と変わり者の前播磨守とその娘の話を耳に入れました。
少し下った僧坊に目を移すと、上品そうな尼君と女の子が話しているのを垣間見し、そこへ北山の僧都が現れてすぐ簾が降ろされました。
後に挨拶に訪れた僧都に、例の女の子の素性を尋ねてみると、憧れの義理の母藤壺の宮の兄兵部卿宮の娘だとわかります。
通りで、恋しい面影が重なるのでした。
故按察使大納言と尼君の一人娘に兵部卿宮が通い、権門の妻が圧力をかけて、娘は心労のため女の子を産んですぐ亡くなってしまったのです。
僧都は尼君の兄で、北山に修行で籠っており、体調の優れない尼君は、京を離れて療養中なのでした。
女の子を引き取りたいとの源氏の申し出に、身よりのないのを案じつつも、僧都も尼君もまだ幼いのを理由に断ります。
藤壺の懐妊
その後、北山の女の子の件も進展なく、葵の上(源氏の正妻)にも相変わらず、打ち解けない日々を過ごす中、藤壺の宮がご不例で里下がりすることになりました。
またしても源氏は、王命婦の手引きで藤壺と逢瀬を遂げます。
藤壺に懐妊の兆しが見られたのもこの頃でした。
心当たりのある藤壺は、繰り返される過ちに、罪の意識で体調が思わしくありません。
一方、藤壺の懐妊を知り、ますます桐壺帝の情愛が深まります。
帝は宮を慰めるために、頻繁に源氏を召して管弦を催されます。
この懐妊に、先頃の夢占いの結果が思い当たる源氏ですが、罪の意識に苛まれつつ御前に伺候するのでした。
若紫を連れ去る
六条からのお忍びの帰り道、見覚えのある荒れた邸を尋ねると、故按察使大納言の邸でした。
北山の尼君が戻っているのでお見舞いし、再度女の子への変わらない気持ちを告げて立ち去ります。
しばらくして尼君は亡くなり、実父の兵部卿宮が明日にも女の子を迎えに来るので、源氏は迷わず、乳母少納言と共に強引に、女の子を二条院に連れ去るのでした。
たぐいまれな器量の女の子を、この先上手く利用しようと目論んでいた、継母の北の方は悔しがります。
父兵部卿宮も、乳母の少納言がどこかへ匿ったのだろうと、諦めるしかありませんでした。
自分好みの女性に育てたいと、思わぬ慰みを得た源氏は、
ねは見ねどあはれとぞ思ふ武蔵野の露わけわぶる草のゆかりを
(まだ枕は共にしていないけれども愛おしく思われます。露わけがたい武蔵野の紫草のゆかりのあなたを)
紫草は藤壺の宮、そのゆかりの若紫(女の子)に、こう詠みかけるのでした。
以上より、「若紫」と呼ばれます。