『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「蛍」はその25帖目のお話です。
「蛍」の登場人物
源氏、玉鬘、兵部卿宮、花散里、夕霧、柏木、内大臣
「蛍」のあらすじ
兵部卿宮に蛍の光で玉鬘をみせる
五月雨の頃、まだ幾日も経っていないのに、兵部卿宮(源氏の異母弟)からは玉鬘への求愛が激しく、亡き母夕顔のいとこの宰相の君を仲立ちとして、兵部卿宮には返歌をさせています。
玉鬘としては恋情をほのめかしたかと思えば、兵部卿宮もつかず離れずにしておくよう指示する、源氏の心を図りかねていました。
夕闇の頃、訪れた兵部卿宮に蛍を放って、玉鬘の姿をほのかにみせます。
想像以上に美しい玉鬘に、狙い通り兵部卿宮はますますぞっこんになります。
以来、蛍兵部卿宮と呼ばれます。
実の親の振りをしながら、影で言い寄る源氏に嫌悪する玉鬘は、いっそ熱心な兵部卿宮との結婚を考えもしますが、自分では決められません。
女房達は、兵部卿宮も源氏に似て美しい容姿だと褒めています。
今のような実の娘の扱いではなく、父内大臣に娘として正式に認めてもらったうえで、源氏の妻にしてもらえたならと、本心では思わなくもない玉鬘です。
源氏としてもその実、玉鬘にとって最良の落ち着く先をと考えているので、自制心で愛欲を抑えているのでした。
端午の節句 夏の町で競射
五月五日の端午の節句には、兵部卿宮をはじめ数々の殿方から、歌や薬玉(悪病にかからぬよう薬草を五色の糸で趣向を凝らし、柱にかける)が、玉鬘に贈られて来ます。
筑紫での辛苦の日々を思うと夢のようで、最終的に誰も傷つけずに、然るべきところにおさまりたいと願うばかりです。
また、花散里の東北の夏の町には、馬場殿があり競射が行われます。
左近衛府の中将、夕霧も宮中の競射の帰りに、そのまま皆を引き連れて六条院にやってきました。
玉鬘をはじめ紫の上方の若い女房達も見物するので、男たちも色めき立って賑やかに催されました。
その夜、今回の競射の主催者花散里に感謝して、めずらしく源氏は夏の町に宿りますが、もはや二人は語らいだけの仲となっているのでした。
長雨と物語
長雨が続き、源氏の妻妾方も物語などを読んで、無聊を過ごしています。
玉鬘も継子いじめの『住吉物語』を見ていたところ、源氏が訪れて、最初は女姓が好む夢物語と馬鹿にしますが、玉鬘のすねた様子を見て、真面目に物語論を語り始めます。
仏教の方便と同じく、虚構の中に真実を描くものとして、まんざら捨てがたいと評します。
一方、将来帝の后に養育中の明石の姫君には、色恋沙汰や継子いじめの物語は、一切聞かせぬよう細心の注意を払います。
紫の上は玉鬘が聞いたならと、内心気の毒に思うのでした。
夕霧と内大臣
源氏は夕霧を絶対に紫の上の側には寄せ付けません。
自身が昔、継母藤壺に忍んだ経験があるからです。
ですが自分亡き後の後見は、夕霧しかいないとの考えから、明石の姫君には今から側に仕えさせています。
夕霧は今や、左近中将に昇進しましたが、以前、幼馴染の雲居雁との仲を内大臣(源氏の義兄、夕霧の叔父、雲居雁の父)に引き裂かれ、それは、自分の官位が今一つ低かったせいだと思い込んでいます。
夕霧にも意地があり、内大臣から折れてくるまで、まだ雲居雁に求婚はしないつもりです。
かといって、浮名を流すわけでもありませんでした。
かたや内大臣としては、夕霧と噂が立った以上、雲居雁を東宮に差し上げるのもあきらめかけており、夕霧が婿なら文句はないので、早く求婚してこないかと待っています。
その頃、内大臣は夢占いで、実の娘が他人の元に引き取られていると告げられます。
玉鬘の父への想いが、内大臣の夢枕に立たせたのかも知れません。
そんな源氏の元にいる玉鬘が、実の娘とは露知らず、実父内大臣は幼くして別れた玉鬘を思い出し、子息たちに探すよう命じます。
実子が気がかりというより、どうにかして東宮に差し上げる娘を他に探したいという、実用的な考えからなのでした…。