『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「蓬生」はその15帖目のお話です。
「蓬生」の主な登場人物
源氏、末摘花、侍従、叔母、兄禅師の君
「蓬生」のあらすじ
その後の末摘花
落ちぶれた宮家の姫末摘花は、風貌も悪く、引っ込み思案の性格です。
源氏と運よく出逢い、暮らし向きも一時、華やいだものの、まもなく源氏は須磨へ退去し、また元の貧しい暮らしに逆戻りとなっていました。
故父常陸宮の残した邸宅が、荒廃していく中、宮家の訓戒を守る末摘花は、暮らし向きのために由緒ある調度類を売ることもしません。
そんな姫宮を見限って従者は、また一人と去っていきます。
兄の禅師(僧)も時折、顔を覗かせる程度で、何の援助も期待はできませんでした。
叔母の西国への誘い
末摘花の亡き母には姉妹がおり、受領(地方官)の妻です。
この叔母は、末摘花の母君が生前宮家を鼻にかけて、受領の妻になった自分を見下していたと、長年恨んでいました。
末摘花をどうにかして自分たちの召使にしようと企んでいたところ、叔母の夫が太宰大弐(大宰府の次官)として西国へ赴くのに、同行することとなります。
そして末摘花も一緒にと誘います。
表面は暮らし向きの心配を装っていますが、行った先で使用人にするつもりです。
末摘花はそんな叔母の思惑をよそに相変わらず引っ込み思案なので、どんなに困窮しようともここを離れようとはしませんでした。
そんな中、源氏が都に帰還し、政界に復帰しますが、末摘花のもとには音沙汰なしです。
もともとかりそめ程度の仲だったので、再来はほとんど絶望的でした。
叔母、侍従を西国へ
叔母の甥と結婚している末摘花の乳姉妹である侍従も、西国へ誘われていますが、主人の末摘花を残して行くのが心残りでした。
旅立ちの日が近づき、豪華に仕立てた牛車で、立派な装束を携えた叔母が意気揚々とやってきました。
末摘花に物質的な豊かさを見せつけて、誘い出すつもりです。
源氏の音沙汰がないのをそれ見たことかと、さらに追い込んできますが、朽ち果てる邸宅と運命を共にするつもりの末摘花は、同行を拒み続けます。
しびれをきらした叔母は、強引に侍従だけ連れて行こうとします。
泣く泣く去っていく侍従に、形見に何も送るものがないので、せめてもと自分の豊かな髪を蔓にして、長年仕えた侍従への餞別にするしかありませんでした。
源氏ついに現る
初夏、花散里を訪れる途中、偶然源氏は、木立に覆われて跡形もない邸のそばを通りかかります。
松に咲きかかった藤が月光に照らされて、ほのかな香りが風に漂い、思わず牛車から身を乗り出す源氏は、ようやくここが故常陸の宮邸だったと思い出します。
側近の惟光に中の様子をさぐらせると、荒れた邸内で末摘花は、ずっと源氏の訪れを待ち続けていたのでした。
変わらない心に感動した源氏は、まもなく完成する二条院の東院に末摘花を迎えます。
西国から戻った叔母は驚愕し、去っていった侍従はもう少し我慢していればと、後悔したものでした。