39帖「夕霧」小野の山荘にて

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源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?

ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。

『源氏物語』は54帖から成り「夕霧」はその39帖目のお話です。

「夕霧」の登場人物

夕霧、一条御息所、落葉の宮、大和守、雲居雁

「夕霧」のあらすじ

小野の山荘へ

体調のすぐれない母一条御息所に付き添い、落葉の宮も一条宮から小野の山荘へ移ります。

小野は比叡山の麓なので、修行中の律師(高僧)が特別に下山して、物の怪退散の加持祈祷をしてもらいます。

一条宮では落葉の宮に接近出来なかった夕霧は、早速、見舞いと律師への用事にかこつけて、小野の山荘に訪れます。

一条御息所は臥せっているので、落葉の宮が応対するしかありません。

山荘の造りとて、気配もより身近です。

日暮れとともに霧が深くなり、

山里のあはれをそふる夕霧にたち出でん空もなき心地して

(山里にしみじみと情を添える夕霧が深くて、立ち去る道を見失いました。あなたのそばを離れたくない気持ちです)

山荘での逗留を夕霧は決意します。以上から「夕霧」と名付けられます。

取り次ぎの女房の後について御簾の内に紛れ込んだ夕霧は、掛け金の外れた襖越しに落葉の宮の袖をとらえます。

胸の内を打ち明けるものの、根が真面目なのでそれ以上には及びませんでした。

ところが、夜明け前に立ち去る夕霧の姿を、律師が目撃していたのです。

まるで逢瀬があったような状況なので、報告を受けた一条御息所の動揺は計り知れません。

落葉の宮の亡き夫柏木の妹(雲居雁)は、夕霧の正妻なので義理の娘に娘婿が通う形になり、致仕の大臣の不興は免れません。

律師が言うように、この縁組みはどちらにとっても好ましくはないのです。

事実がどうであれ、もはや世間に言い訳も出来ないとあきらめた一条御息所は、せめて一夜だけでなく正式な夫婦の契りをと、二人の仲を認めるような文を夕霧あてにしたためるのでした。

一条御息所の死去

届けられた一条御息所の文は、目ざとく見つけた妻雲居雁に取り上げられ、夕霧はいく日か返信出来ずにいました。

実事がなかった以上、今のところ夕霧が三日間通う必要はありませんが、真相を知らない一条御息所としては、一夜しか通って来ない上、返信もないので、完全に娘落葉の宮が見限られたと失望します。

落葉の宮に問いただしても、恥じらうばかりで何の申し開きもしないので、思い込みと行き違いが重なって、一条御息所は重篤に陥ってしまいました。

一条宮への帰還

文を取り返した夕霧の返信が届いた時には、一条御息所はすでに息をひきとっていました。

唯一の身寄りで甥の大和守が葬儀を行い、夕霧も何かと法事の世話をします。

大和守は権力者の夕霧に全面的に協力して、一条宮を改装し落葉の宮を連れ戻します。

見違える程立派な一条宮には、すっかり主顔の夕霧が待ち構えていました。

まるで以前から夫婦だったように装い、臨終に一条御息所の公認を得た形にするため、例の文を逆手にとった夕霧の苦肉の策でした。

落葉の宮は、最後まで抵抗して塗り籠にこもりますが、もう後に引けない夕霧は、侍女小少将の手引きでようやく夫婦の契りを交わすのでした。

一方、妻雲居雁は大勢の子供と一緒に、実家(致仕の大臣宅)へ戻ったままなので、父の大臣も加勢して、迎えに行っても今は手がつけられないのでした。

真面目一筋だった夕霧は、色恋沙汰はもう懲り懲りと今回の件で観念したのでした。

(参考文献)阿部秋生,秋山虔,今井源衛,鈴木日出夫.『源氏物語』①~④.小学館.2006.新編日本古典文学全集20~23
KoGeTu

大阪市生まれ。大学卒業後、旅行会社の添乗員として訪れた旅先で、古典の舞台に思いを馳せる内に、あらためてその世界に魅了されました。ブログ運営と共に、執筆活動も行っています。著作は、平安時代の検非違使の活躍を描いた小説『衛士の火は燃ゆ』(朱雀門編)があります。

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