『源氏物語』って長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「若菜 下」はその35帖目のお話です。
「若菜 下」の登場人物
源氏、紫の上、明石の女御、明石の御方、女三宮、朱雀院、夕霧、柏木、落葉の宮
「若菜 下」のあらすじ
住吉大社への御願ほどき
柏木は、六条院での蹴鞠の際に、憧れの女三宮の姿を見せてくれた子猫を愛猫家の東宮を通して、手元に引き取ります。
その頃柏木は、式部卿宮(紫の上の父)の孫娘真木柱(髭黒大将の娘)の婿候補に挙がりますが、猫ばかり可愛がっていると噂にのぼり、結局、風流好みで知られる兵部卿宮(源氏の異母弟)が選ばれます。
しかしその後、兵部卿宮と真木柱の夫婦仲はしっくりいかないのでした。
一方冷泉帝が譲位、東宮(朱雀院の皇子)が即位し、明石の女御腹の皇子が次の東宮(皇太子)に就きました。
太政大臣(源氏の義兄)は致仕(大臣を辞去)し、髭黒大将は右大臣、夕霧は大納言、柏木は中納言に昇進します。
遂に、明石の入道の願文と自身の宿曜と夢占いが実現した源氏は、一族を挙げて、住吉大社に御願ほどきに詣でるのでした。
女楽と紫の上の発病
出家した朱雀院がまもなく五十の御賀を迎えるにあたり、女三宮の琴を父朱雀院に披露するため、
熱心に指導する源氏は、自然、紫の上に夜離れがちです。
紫の上にはこれまで経験のない独り寝でした。
兼ねてから、源氏の女三宮への愛情が薄いとの噂を耳にする朱雀院と今上帝に、琴の上達具合で、愛情の深さを示す機会でもあります。
御賀の前に、女楽が夕霧立ち合いで行われます。
身重で里下がり中の明石の女御は箏の琴、明石の御方は琵琶、紫の上は和琴、女三宮も琴を指導の甲斐あって危なげなく、演奏しました。
夕霧は美しい紫の上の面影が忘れられず、自然、和琴の音色に引き寄せられるのでした。
定まった奏法のない難解な和琴を見事に弾きこなして、源氏も改めて、紫の上以上の女人は居ないと痛感します。
その夜、過去に出会った女人の人柄を紫の上に回想的に語った後、紫の上は急に病に臥すのでした。
女三宮と柏木の密会
二条院で養生する紫の上を看病するため、源氏は六条院を留守にしがちです。
柏木が女三宮に忍び込むのに絶好の機会でした。
丁度、葵祭の前で人少なな折、小侍従の手引きで、柏木は女三宮と密通してしまいます。
女三宮は懐妊し、その後も何度か逢瀬を重ねます。
女三宮の容態も見舞う源氏は、不用意に褥に挟まれていた柏木の恋文を見つけるのです。
裏切られた源氏ですが、事を荒立てるわけにも行きません。
また、過去の自身の過ちも自然、思い起こされます。
知らない素振りをする源氏に、女三宮と柏木は恐れおののくばかりです。
朱雀院の五十の御賀
紫の上の発病と女三宮の懐妊で、予定されていた六条院主催の朱雀院の御賀は、延期のままです。
紫の上は一時危篤に陥り、現れた物の怪は、故葵の上に取り憑いたのと同じ故六条御息所でした。
女楽の夜、不都合な自分の性格を、源氏が紫の上に語ったのを怨んでのことでした。
故人の娘を中宮(秋好中宮)にし、生前の薄情を償ったはずの源氏は、あまりの執念深さに言葉を失います。
物の怪の六条御息所は、妄執を供養してくれるよう、源氏と娘の秋好中宮に依頼しました。
その後小康が保たれた紫の上は、六条院に戻ります。
年の暮れ、ようやく延び延びになっていた朱雀院の御賀が催されることとなり、あの時以来、病がちで引き込もっていた柏木は、六条院の試楽に招待されます。
杯が回って酔った振りをした源氏に嫌味を言われ、身の破滅しかないと思い詰めた柏木は、重篤となり、妻落葉の宮(朱雀院の第二皇女)と引き離されて、実家の致仕の大臣と北の方の元に引き取られるのでした。