『源氏物語』って、長くて難しそうだけど、どんなお話?
ここでは、わかりやすく各帖にわけてあらすじをご案内しています。
『源氏物語』は54帖から成り「須磨」はその12帖目のお話です。
「須磨」の登場人物
源氏、紫の上、花散里、惟光、良清、前右近将監、宰相中将
「須磨」のあらすじ
旅立ち
すでに官位も剥奪された源氏は、流罪になる前に、都を離れる決意をします。
人目にたたぬよう、致仕の左大臣(義父)や花散里、入道の宮(藤壺)、そして北山の桐壺院の御陵へ別れの挨拶に訪れます。
下賀茂神社の近くを通りかかると、従者である前右近将監が、いつぞや葵祭の御禊の日に髄身として従った、栄光の日々を懐かしみます。
朧月夜の君にも何とか文を遣わし、最後に二条院で紫の上に財産の全てを託した後、源氏はそっと夜明け前に、都を旅立つのでした。
須磨の日々
たどり着いた須磨は、浦から少し奥まった唐風の住まいです。
以前、目をかけていた摂津守などが、何かと陰で援助してくれています。
須磨への供には、惟光、良清、前右近将監など、ごくわずかな従者だけです。
前右近将監は、父の常陸介の赴任先に従わず、こちらへ慕い来ました。
あの空蝉の夫(前の伊予介)の息子です。この者も官位を剥奪されたのでした。
他の従者も妻や恋人、家族を都に残し、いつ帰れるとも知れない旅に従っています。
源氏はそんな従者達に心配させまいと、努めて管弦や絵画で気を紛らわせているのでした。
このところ良清に、明石の入道が便りを寄せますが、以前から娘に言い寄っても取り合ってもらえなかったので無視していました。
いつぞや、源氏の耳に入れたことのある変わり者の入道です。
寂しい浦の風情は、在原行平や小野篁、菅原道真など冤罪に問われた人々が思い起こされ、不安で夜も寝付けない日々が続きます。
そんな折、都から宰相中将(義兄)が訪れてくれました。
中将も相変わらず右大臣の権勢下で、面白からぬ日々を過ごしていたのでした。
上巳の祓え
早くもこの浦に来て一年が経ちます。
うららかな春の海辺で上巳の祓えをしていると、天候が急変して高潮に呑まれそうになります。
その夜、夢枕に「なぜ宮からの召しに従わないのか」と、何者かが告げて目覚めます。
もしや竜神が、源氏の君に魅せられるあまり、竜宮へ連れていこうとするのか、何も思いあたらぬまま悪天候は続くのでした。